日常診療に役立つ眼瞼・眼窩疾患の診かた

T.眼瞼腫瘍

 最大の落とし穴
  悪性腫瘍を見逃す
 
 頻度の高い腫瘍
  脂腺癌、基底細胞癌…両者で66%
  扁平上皮癌…13%
  悪性リンパ腫…13%

 色
  茶褐色…母斑、脂漏性角化症、基底細胞癌
  肌色〜黄色…化膿性肉芽腫、扁平上皮癌
  黄色…霰粒腫、脂腺癌
  辺縁に黒い所…母斑、基底細胞癌
  真っ黒…基底細胞癌、悪性リンパ腫

  <茶褐色>
   1.脂漏性角化症 Seborrhaic keratitis
      もっとも高頻度の良性腫瘍
       老人性疣贅
     表面が角化(ザラザラ)、凸凹、ときに擦過による出血
     中心に陥凹あることもあり
     表面・周囲に血管侵入なし
     治療:液体窒素による冷凍凝固を数回繰り返す
        外科的切除(V-Y flap)

   2.母斑 nevus
      ホクロ
      母斑細胞が表皮下に集まったもの
      睫毛の脱落なし
      表面平滑でつやつや
      治療
       Shaving(削ぎ落とし)
       cf:小さい良性腫瘍…開放療法 Open treatment
       眼瞼は血流良好のためすぐに上皮化する

   3.基底細胞癌 Base cell carcinoma:BCC
      睫毛は脱落してなし
      辺縁に隆起した結節
      形は不整(境界不明瞭)
      ぶよぶよしていて表面は凸凹
      ときに中央に潰瘍化した凹み(癌が自壊)
      血管が収束
      ◎辺縁に黒い所(色素)がある!…強拡大で観察
      治療
       転移は少ないので境界から5〜10mm離して切除
       ただし、眼瞼眼窩周辺は高リスク部位と考えられている

      基底細胞癌モルフェア型
       深部に浸潤する傾向がある
       眼窩内容除去術が必要

      母斑と似ているが違う点
       1〜2ヶ月で増大(進行が緩徐でない)
       睫毛の脱落
       表面中央の潰瘍化した陥凹
       血管(+)

      黒くない基底細胞癌も稀だがある
       血管(+)→悪性腫瘍

  <真っ黒>
     悪性リンパ腫 Malignant lymphoma
      5年生存率 20%
      際立つ黒さ
      辺縁が染み出している

  <黄色>
     脂腺癌 Sebaceous carcinoma
      マイボーム腺、Zeiss腺由来
      高齢者(70才前後)
      血管が収束
      睫毛が脱落
      リンパ節転移しやすい
      手術
       切除範囲広い:Switch flap法
      鑑別診断
       @脂腺過形成
         良性腫瘍
         白色(黄色ではない)
         乳頭腫に似ている
       A脂腺腺腫(≒脂腺過形成)
         黄色
       B化膿性肉芽腫(埋没法後)
         埋没糸が原因

 Key word
  @腫瘍の色調
  A周囲の血管
  B強拡大で観察
     


U.眼窩腫瘍

 血管性腫瘍の新分類
  1.血管腫…苺状血管腫
  2.血管奇形
   1)Low-flow lesion
      静脈奇形…海綿状血管腫
      リンパ管奇形…リンパ管腫
   2)High-flow lesion

 苺状血管腫(乳児血管腫)
  毛細血管腫
  自然退縮傾向だが眼周囲は異なる
  増大時期と視角発達時期が一致→視覚刺激遮断弱視
  症状:眼瞼腫脹、眼球突出
  治療
   ステロイド内服・局所注射…1/3に有効
   色素レーザー…深部には無効
   外科的摘出…技術的に困難
   ○Propranolol(非選択的β-blocker)商品名インデラル
     内服または点滴
     ステロイド抵抗例にも有効
     VEGF,bFGFの発現抑制→血管新生抑制
   増殖期の第一選択はインデラル
   第2選択は手術
  血管腫を疑ったらまず小児科へ紹介






  Copyright © Sugimoto Ophthalmic Clinic All Rights Reserved.