アレルギー性結膜疾患の臨床・基礎の話題から
T.臨床:春季カタルによる免疫抑制剤の使い方
春季カタル
上眼瞼結膜
石垣状巨大乳頭
角膜輪部
充血、トランタス斑
角膜
落屑様
遷延性角膜炎
シールド潰瘍、角膜プラーク
新生血管、角膜混濁
性差・年齢
男 7割
4才〜、8、9才がピーク:年少者
病態
巨大乳頭
白濁…好酸球
粘性眼脂…ムチン+好酸球
春季カタル=好酸球病と言える
浸潤好酸球
ghost好酸球
好酸球顆粒蛋白が角膜上皮障害を起こす
Shield ulcer→角膜プラークができる
プラーク内に細胞残渣集積…好酸球顆粒蛋白(MBP)
結膜への好酸球浸潤
肥満細胞→IL-4,IL-13
T細胞→IL-4,IL-13
結膜線維芽細胞→筋原線維芽細胞(形質転換)→エオタキシン
ステロイドレスポンダー
0.1%デキサメサゾン 3回/日 1〜2週間
10才未満 10才以上
low responder(≦5) 0 7
intermediate responder(6-15) 5 4
high resipondr(≧15) 4 0
フルオロメトロン 6回/日 1ヶ月
3〜9才
low responder(≦5) 70%
intermediate responder(6-15) 30%
カルシニューリン阻害剤
パピロックミニ
2週間でTrantas dots消失
巨大乳頭
リンデロン+リボスチン 無効例
+パピロックミニ→粘性眼脂↓、角膜障害↓
ステロイド離脱率
6ヶ月で3割が可
副作用…重篤な例は少ない
タリムス…重症型に使うことが多い
1ヶ月で巨大乳頭消失
ステロイド離脱率 54%
副作用
あまりない
熱感、刺激感
比較
パピロックミニ タリムス
効果マイルド 効果強い
持続性 即効性(1W)
防腐剤なし 防腐剤入り
軽〜中症例 重症例
抗アレ・ステ併用 単独使用、急性増悪期
使用方法
寛解維持→シクロスポリン+抗アレ
軽〜中症例→シクロスポリン+抗アレ
重症→タリムス
さらに増悪あれば→ステロイド追加
免疫抑制剤は1ヶ月使用して効果と副作用を確認する
効果がない場合は漫然と使用せずステロイドに戻す
ステロイドの必要性
結膜線維芽細胞→筋原線維芽細胞(形質転換)→エオタキシン
ストロイドのみ抑制可↑
抗アレルギー剤
長期間使用
刺激感が少ない方が良い
浸透圧比 0.6〜2.0%
防腐剤が少ない方が良い
cf:リボスチン
浸透圧比 0.9〜1.1
BAC 0.003%
U.話題提供
ムチンとアレルギー
正常なムチン産生はアレルギーを予防する
ドライアイの人はアレルギー性結膜炎になりやすい
花粉症患者さんには抗アレルギー剤+人工涙液を考慮
重症アレルギーとムチン
春季カタル…粘性眼脂→ムチンと好酸球
慢性アトピー結膜炎…角膜上皮の角化と結膜組織の瘢痕化
肥満細胞→(脱顆粒)→ATP
→結膜上皮→MUC4
→胚細胞→5AC
→角膜上皮細胞→MUC16
(P2Y2作動薬(ジクアス)はここに作用)
→IL-13,amphiregulin→ムチン産生↑
V.基礎
免疫には2種類ある
自然免疫 Innate allergy
獲得免疫 Adaptive allergy
結膜上皮
機能 @バリア機能 Aアレルギー炎症を制御
上皮由来Th2誘導サイトカインによるアレルギー反応
Eosinophil-Predominant inflammation
アレルギー反応の主経路は抗原による物理的刺激
抗原
ダニが春季カタルの一番の原因
ダニはCysteine protease,Serine proteaseといった蛋白分解酵素活性を持つ
結膜上皮細胞よりTSLP(サイトカイン)産生
TSLPはアレルギー反応のmaster switch
春季カタルでは巨大乳頭中にTSLPと肥満細胞が発現
IL−33
サイトカイン誘導
抗原刺激やcell necrosisで産生
necrosisによるNatural inflammation
肥満細胞でIL-33発現
巨大乳頭、CCh、アトピー皮膚炎組織に存在
IL-33→好酸球↑
IL−25
上皮細胞で産生され、アレルギーを発現
春季カタルの巨大乳頭に存在
春季カタルは抗アレルギー剤、ステロイド、免疫抑制剤だけでは治らない
Innate allergyを抑えないと制御できないと思われる
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