上下斜視の治療方法を知って実践しよう


手術を勧めるべき上下斜視5つ

先天性上斜筋麻痺:手術で斜頸を改善
 手術の意義
  斜頸の改善
  整容的な眼位改善
  良好な両眼視機能の獲得と維持
 手術のタイミング:斜頸や上斜視の原因が上斜筋麻痺であると確定後
  斜頸・斜視の程度が強い
  手術希望あり
  *希望しない場合:顔面の非対称化・体幹の骨格への影響について説明
 手術:下斜筋減弱術が第一選択
  下斜筋減弱(後転術or切除術)
   上下偏位が15凾超えるor術後の残存斜視→術式追加考慮
    上直筋後転術
    上斜筋縫い上げ術
    健眼の下直筋後転術
   斜視手術の説明+注意点:術後に反対眼の上斜筋麻痺が判明することがある
               →潜在性の両眼性上斜筋麻痺

下斜筋過動症:横を見たら片目が上がる
 手術の意義
  整容的改善
  良好な両眼視機能の維持
 手術のタイミング:診断がついたら
  両眼視機能が良好でも整容的に目立つ
  顕性の水平斜視に合併→同時手術
  手術希望あり
 手術:下斜筋後転術

交代性上斜位:「たまに白目になっていた」
 手術の意義
  整容的改善(完全消失は難しい)
  両眼視機能の維持
 手術のタイミング:診断がついたら
  →低年齢児はしっかり見極めてから(交代性上斜位or/and下斜筋過動
  両眼視機能が良好でも顕在化しやすいとき
  手術希望あり
 手術
  両眼 上直筋後転術
  両眼 下斜筋前方移動術…下斜筋過動過動合併時

甲状腺眼症:非活動期に手術を検討
 手術の意義
  整容的改善
  複視の改善:正面視と下方視での複視消失が目標
 手術のタイミング:非活動期
  消炎後(ステロイド投与終了)
  MRIのSTIRや造影で炎症がない
  斜視角に大きな変動がない
 手術:罹患筋の後転が基本
  例:下直筋の肥厚・線維化で伸展制限や上転障害→下直筋後転術

滑車神経麻痺:見た目にはわかりにくいが複視がつらい
 手術の意義:改善できるもの
  複視(正面視と下方視が目標)
  プリズムでも消失しない回旋複視
  代償性頭位異常(斜頸・顎上げ)の改善
 手術のタイミング
  循環障害が原因のとき:7〜8割は発症後約3ヶ月で自然軽快する
   発症後半年経過しても改善傾向なし・斜視角が安定→手術検討
 治療方針:斜視角と外方回旋偏位の有無をみる
  有→上下偏位の矯正→プリズムor手術
  無→上下偏位の大きさ
     10剿「満→プリズム
     10刪ネ上→手術
 手術:垂直筋の水平移動で外方回旋斜視を治す
     1筋腹の移動で6〜7°の回旋を矯正
    例)上直筋を耳側移動・下直筋を鼻側移動→内方回旋↑
  患眼:下斜筋短縮+鼻側移動
     上直筋後転+耳側移動
  健眼:下直筋後転+鼻側移動
  

上下斜視
 手術・プリズム適応が多い
  小角度でも複視はつらい
  正面視・下方視の複視なしをまず目指す
  整容的改善も重要
 回旋複視の存在を念頭に
  回旋複視は手術で治す
  症状を詳細に訊く:カバーテストやAPCTでは検出不可

 保存的治療
  プリズム:上下複視の改善に有用(とくに融像幅の狭い上下斜視に)
   「組み込みプリズム」と「膜プリズム」がある
   麻痺眼・非優位眼に
   違和感の少ない角度
    斜視角の60〜40%が多い
  ボツリヌス毒素:適応は少ないが活動期の甲状腺眼症はトライ
   適応:12歳以上
    活動期の甲状腺眼症
     消炎しながら注射可能:成功率 43.8%
     拘縮した筋には効果がない→手術へ
   患者への説明
    定量が難しい
    約3ヶ月間で効果は消失:本来経過観察すべきであった症例にもトライ
    副作用:(他のタイプの)一過性の斜視や複視・眼瞼下垂
 手術
  良い適応:小角度で回旋なし
   斜視角が小さい(10刪ネ下)
   回旋偏位角度が小さい
    上下偏位を矯正してみて回旋の自覚が消失するか確認
   一過性複視の可能性
    一過性血管性麻痺の自然治癒
    原因疾患の治療により改善・変動する可能性がある時期
  手術非適応
   結膜切開が困難(近い将来、緑内障手術が必要となる症例)
   希望していない











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