小児の眼鏡処方
T.眼鏡処方の原則
乱視の特徴
直乱視:横長に見える
倒乱視:縦長に見える
*少ない度数でも見え方に大きな影響が出る
斜乱視:水平線、垂直線が傾斜して見える
できるだ避けた方が無難
直行する乱視軸:処方しない!
(影響の強い方のみ乱視を入れて処方)
ダウン症候群
直乱視が多いが斜乱視も多い
屈折値どおりに処方!
U.乳幼児への眼鏡処方;弱視治療用眼鏡
ヒトの視覚感受性期間
ヒトの視覚の感受性は、生直後2〜4週間は比較的低く
その後急速に高くなり、1歳6ヶ月頃までが最も強い期間であり
その後次第に減衰して8歳の終わり頃まで続くと考えられる
立体視の感受性期間
3か月〜6か月
眼位ずれがあると立体視が発達しない
6か月〜18か月ないし24か月
眼位ずれがあると発達した立体視が消失し
後に眼位が正位になっても回復しない
乳児の眼鏡処方に関する私見
3歳で屈折異常が見つかれば、ほとんどの弱視は治療できる
眼鏡は歩行が可能となると装用が定着しやすい
乳児:眼位が正位で視反応が良好なら1歳半まで経過観察
1歳半:強度遠視、強度乱視、極端な不同視なら眼鏡処方を検討
*ダウン症児では2歳半から3歳頃
屈折の変化
生後1年目までに正視化が起こることが多い
乱視は5歳頃成人の状態に達する
Red reflex法(新生児)
直像鏡・検影器で眼底の反射・徹照をみる
→器質疾患・視性刺激遮断の有無を検出
正常:両眼から同等の反射
反射が暗い:強度屈折異常
反射がない:白内障
V.学童に対する眼鏡処方
調節麻痺剤
アトロピン
散瞳:7〜10日
調節麻痺:7〜12日
シクロペントラート
散瞳:2〜3日
調節麻痺:10〜24時間
年齢による屈折矯正のガイドライン(AAO 2017)
3歳台
近視:-2.50以上
遠視(斜視なし):+3.50以上
遠視+内斜視:+1.50以上
乱視:1.50以上
3歳台 不同視
近視:2.50以上
遠視:1.50以上
乱視:1.50以上
眼鏡処方の実際
内斜視:アトロピン点眼→完全矯正眼鏡
その他:シクロペントラート点眼
4歳以上の遠視度数:-0.50Dで処方が多い
遠視性不同視弱視
健眼の遠視度数をきっちり入れて処方
大人と違って乱視度数は減らさず処方
幼児の強い近視の場合
4歳頃までは近見重視
3歳まで2〜3D減らし、4歳まで1D減らす
瞳孔間距離
小児ではPDが2mm広がったら再処方
レンズのプリズム効果
調節性内斜視、間歇性外斜視+近視の場合
瞳孔間距離はNever Short!
眼鏡を子供が嫌がってかけないとき
眼鏡度数のチェック
遠視が強い子供→アトロピン1日1回点眼
眼鏡があった方が見やすいという感覚をつかんでもらう
親のチェック
親が眼鏡装用に拒否感→子供は敏感に察する
眼鏡の必要性を詳しく説明
子供のチェック
首から上の触覚過敏がある場合
鼻根部や耳の後ろなどをマッサージ
園にお願いして装用を促してもらう
小児弱視用治療眼鏡療育費支給申請
9歳未満
再支給が認められる条件
5歳未満:前回から1年以上経過
5歳以上:前回から2年以上経過
眼鏡処方時期
小学校低学年:両眼で0.7見えれば良い
小学校中学年以上:両眼で1.0以上必要
調節麻痺下等価球面度数:低学年では-2.00Dを超えたら眼鏡処方
不同視:両眼視機能の面から0.75D以上の差があれば検討
近視進行に伴うレンズ交換
-2.00D以上の近視の場合-0.50D強くするのが基本
乱視は-0.25Dずつ変更
近視と乱視の両方を変更する場合、両方-0.25Dの変更
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