年齢別小児眼科診療


0〜1歳

自覚的視力検査
 固視・追視(両眼・片眼)
 嫌悪反射:片眼視力不良を示唆
・子どもたちはおもちゃが大好き(光る、音が鳴る、動く)
・子どもたちの診療におもちゃは強い武器
・振り子様眼振(Pendular nystagmus)は両眼性の視力不良

他覚的検査
 眼圧…触診
 スキアスコープ
  徹照の完全性・左右差
   不完全…屈折異常
  大まかな細隙灯顕微鏡検査+眼底検査の役割

〜2か月(頸が座らない)
 家族の訴え(主訴)…見た目でわかること
 視診…顔面形態異常、眼球突出・陥凹
    診察室に入った時から子どもを観察
 家族歴:白内障、網膜芽種、緑内障、FEVR…)
 未熟児?、症候群?


3か月以降
 家族の訴え(主訴)…視力面の訴えも出てくる
 固視・追視(ペンライトよりおもちゃ、お顔の絵の視標)
  新生児・乳児は顔を好んで見る習性がある
  嫌悪反射があれば、視力の左右差
  手での遮蔽や遮蔽版をあまり顔に近づけすぎない
  無言で行わない。保母さんを見習って「とっても上手だね」
 眼位・眼球運動
  Hirschberg法
  Cover-uncover test
  向き運動(両眼開放で)、引き運動(片眼ずつ遮蔽して)


2〜3歳

見落としていえない疾患は斜視を主訴に受診することが多い
 眼底疾患(FEVR、コーツ病、網膜芽細胞腫など)
 乳児期に未発見の先天性疾患(片眼の白内障など)
 脳腫瘍(頭蓋咽頭腫など)

弱視リスクファクター基準(AAPOS 2021)4歳未満
 斜視 >8凵i恒常性)
 不同視>1.25D
 遠視 >4.00D
 近視 >-3.00D
 乱視 >3.00D


4〜5歳

可能な検査
 視力検査 4歳で(1.0)が98%
 眼底写真・OCT

やる気を起こさせる Magic Phrase
 「これができたらママも喜んでくれると思うな」
 「今日はがんばったね」
 「ぜんぶできたね」
 「こんどもやろうね」
代替案的 Magic Phrase
 「いたい目薬といたくない目薬 どっちがいい?」

対応すべき疾患
 〇 三歳児検診後の弱視治療
 △ 調節性内斜視:もっと早い発症
 △ 間歇性外斜視:手術にはやや時期尚早
 ◎ 上斜筋麻痺:骨格の変化を予防
 ◎ 睫毛内反:幅が広いと自然治癒しない
 ○ 眼瞼下垂:就学までには一考

シクロペントラート(サイプレジン)
 散瞳効果は弱い 調節麻痺効果が強い
 アトロピンとの差:平均0.45D近視側に偏る
 そのまま検眼レンズを試用して眼鏡処方度数を決定
 副作用:頻度は低いが、幻覚・錯乱・けいれん。意識消失。傾眠傾向と不穏。

内斜視
 先天内斜視:生後半年までに発症→早期手術
 調節性内斜視:1〜3歳頃に発症
 スマホ内斜視:最近は低年齢化?

 後天性の場合は、頭蓋内腫瘍の除外必要

間歇性外斜視
 恒常性にならない限り待機的に経過観察
  コントロール良好なら経過観察
  コントロール不良なら手術
  5歳以上ではとくに最終成績に差がない
  年長〜小学生の方が術後生活が良好

上斜筋麻痺
 あまり遅くならないうちに手術
  5歳で明らかな眼性斜頸→強い顔面非対称性
  両眼視がなくなると頭部傾斜しない

睫毛内反
 幅が広く角膜炎があれば早期手術
  3歳では自然軽快の可能性あり
  眼瞼幅の2/3以上睫毛が当たる→自然軽快の可能性は非常に低い
  角膜障害が継続すると混濁が永続化

眼瞼下垂
 見た目が気になるようなら手術も検討
 侵襲度の高い手術は後の修正に影響
  顎上げ頭位で代償→弱視にならない
  顎上げ頭位を取らない→健眼遮蔽治療
  基本的に整容的な問題で機能異常なし


就学前

屈折矯正(眼鏡装用)の効果
 治療開始直後は眼鏡のみで経過観察し、4か月をすぎて視力改善がなくなったら健眼遮蔽を開始する
 治療開始時の視力が0.2以上、4D以内の不同視弱視であれば、眼鏡装用から3か月は健眼遮蔽をせずに経過観察

健眼遮蔽の併用効果
 眼鏡装用のみで視力改善が得られなくなったら、1日2時間の健眼遮蔽でさらに視力は向上する

アトロピンペナリゼーションの効果
 中等度弱視に対する健眼遮蔽とアトロピンペナリゼーションの視力改善効果は同等

残余弱視に対する治療 健眼遮蔽
 2時間の健眼遮蔽で弱視が残る症例にはさらに遮蔽時間(6時間)を増やすと視力改善が得られる

間歇性外斜視
 病態
  斜位と斜視が混在
  通常は良好な立体視を持つ
 自然経過
  斜視角・眼位のコントロールともに、半数以上で変わりがないものの20%程度に悪化がみられる
  経過観察期間が長くなると、斜視角が悪化する割合は増える
 手術
  斜視角、斜位のコントロール状態、立体視を評価する
  恒常性になる前なら就学時前後まで待つ
  本人や保護者が斜視をどうとらえているか(本人の意思も尊重)
  

小学生

スマホによる急性内斜視(急性後天共同性内斜視 acute acquired comitant esotropia:AACE)
 頭蓋内疾患の精査が必要
  外転神経麻痺
  眼球運動障害がない場合、開散麻痺が関与(脳幹部障害を示唆)

心因性視力障害
 原因:家庭内での問題、学校内での問題が半々
 治療:家庭内での問題:保護者とのコミュニケーション、だっこ点眼
    学校内での問題:担任の先生への相談
    診療内科や精神科へのコンサルト






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