原発閉塞隅角緑内障の分類と治療の考え方
   -AIGS分類の光と影-


1.PAGの原理と治療の原則

 PAGの失明リスクとアジア
  ACGはOAGと比較し、有病率1/3だた失明数は同じ=失明リスク3倍
  アジアに多い(アジア>インド>ヨーロッパ)
   アジアにおける不可逆的失明の最大の要因

 発症は高眼圧に完全依存…OAG(NTG含む)と大きく異なる
 眼圧上昇の理由は明確
  POAG…見えない敵
  PACG…敵は見えている
  適切な時期に治療すれば治療可能
  PACは原因の治療を第一義に
   漫然と治療してはいけない


2.PAGの病型分類

 隅角閉塞
  機能的
  器質的

 アジアでは無症状のまま末期に至る慢性PACGが多い
 瞳孔ブロック≒PACG


 病型分類…Stage分類
  PACS 繊維柱帯が270°以上観察不可
  PAC  隅角閉塞(+)GON(-)PAS、高眼圧等
   APAC Acute型
   CPAC Chronic型 
  PAG  隅角閉塞(+)GON(+)

 AIGS分類
  AIGS=Assosiation of International Glaucoma Societies
  ISGEO分類、Foster分類とほとんど同じもの

 メカニズムの分類
  LevelⅠ 瞳孔ブロック
  LevelⅡ プラトー虹彩
  LevelⅢ 水晶体起因性
  LevelⅣ 悪性緑内障(水晶体より後方の圧が高くなり水晶体が前面に押される)

 AIGS分類の功
  病型分類に関して
   グローバル・コンセンサス
   視機能の障害に基づいた病期分類
  隅角閉塞のメカニズムに関して
   マルチメカニズムの呪縛からの解放
   従来瞳孔閉塞≒PACだったが、実は原因はmultiだった

 AIGS分類のグレーゾーン
  病型分類に関して
   隅角鏡所見か画像所見(OCT)か
  PACSの定義
   3象限では厳しすぎる(2象限にすべき?)
  PACの定義
   PACSの定義をみたさない(3象限の閉塞がない)のにPASがある症例の分類は?
  正常眼圧のPAC
   PACだが眼圧正常のため治療不良…定義と不一致

  隅角閉塞のメカニズムについて
   プラトー虹彩の定義をどうするか?
   続発性と原発性の間の線引きが困難
   LevelⅣのメカニズムを一元的に説明できるか?
    本態が不明で学術的仮説の段階
   AIGSは発展途上の分類


3.隅角閉塞に関与するメカニズム

 PACの眼圧上昇メカニズム
  機能的閉塞隅角
     ↓
  器質的閉塞隅角
  繊維柱帯の流出路抵抗↑(実在は?)

 隅角広狭に関与する因子
  虹彩因子
  水晶体因子
  毛様体因子

  LevelⅠ
   水晶体因子:水晶体前面の前方移動
   虹彩因子
  LevelⅡ
   毛様体因子
   虹彩因子:水晶体摘出→毛様体突起が後方に回転移動
   水晶体因子
  LevelⅢ
   水晶体因子
  LevelⅣ
   水晶体後方因子
    硝子体圧亢進、aqueous misdirection、脈絡膜剥離

  水晶体因子関与:Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ
  虹彩因子関与:Ⅰ、Ⅱ
  毛様体因子関与:Ⅱ、Ⅳ

  隅角閉塞の真の原因を考える


4.治療の考え方

 1)治療適応の決定
  PACS
   原則は経過観察し、PACに進行したら治療
    ただし、南インドではPACSの22%がPACに進行した
   APACのリスクが高い場合は予防的治療もある
  PAC
   原則は治療
   ただし、PACSに準じても良い症例もある?
   高眼圧PAC…断固とした治療
   高眼圧でないPAC…治療不要かもしれない
  PACG
   徹底的な治療
   失明リスクはOAGの3倍

 2)治療法の選択
  治療ターゲット
   機能的閉塞隅角による眼圧上昇に対して
    根治的療法:水晶体摘出、LGP
    対症的慮法:薬、LI、PI、レクトミー
   器質的閉塞隅角による眼圧上昇に対して
    根治的療法:GSL
    対症的療法:薬、レクトミー
   繊維柱帯劣化に対して
    根治的療法:なし
    対症的療法:薬、LGP、ロトミー、レクトミー

  選択
   瞳孔ブロックに対して
    LI、PI、(LGP)、水晶体摘出
   プラトー虹彩に対して
    LGP、水晶体摘出
   水晶体起因性に対して
    水晶体摘出術
   悪性緑内障にたいして
    (水晶体摘出)

  LTP、ロトミー、レクトミー、薬…隅角閉塞のための治療法ではない
  GSL…器質的隅角閉塞の開放
  LI、PI、LGP、水晶体摘出…1stライン






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