学童期の斜視・弱視

学童期における弱視
 診断の遅れ…検診のすり抜け
 治療の遷延…発見の遅れ
          治療への抵抗
 治療後…再発
       眼鏡からCLへ
       治療の終了

内斜視…調節性内斜視
      残余内斜視
      続発性内斜視
外斜視…間歇性外斜視
後天性斜視…外傷
         急性発症斜視

T.弱視の治療
就学前視力スクリーニング
                 特異度 感度1 感度2
 検影法             90%   64%   90%
 レチノマックス         90   63   88
 シュアサイト          90   63   81
 HOTV VAテスト      90   54   72
 Randomdot E Stereotest    90   42   59
 交代遮蔽試験          98   16   24
 MTIフォトスクリーナ     98   37   59

  特異度:真の正常者が陰性になる
  感度1:すべての異常に対して
  感度2:重要な異常に対して

学校検診でも見逃される片眼弱視→屈折検査が重要

STEP1
 学童期の弱視を治療するか?
 ・20/40〜20/400の視力の7才〜17才に対する改善率
  7〜12才 眼鏡+訓練 53%
         眼鏡のみ  25%
  13才〜  眼鏡+訓練(未治療) 40%
         治療経験(+) 25%
 ・つまり
  12才以下 眼鏡+訓練
  13才〜  未治療なら 眼鏡+訓練
        治療済みでもまだ25%が改善
 ・成人でも健眼が失明すると弱視眼の視力↑することがある
 ・とくに3〜5才は治療によく反応する

STEP2 屈折矯正
 完全矯正と低矯正眼鏡
  3〜7才の遠視性弱視の治療成果
   最初、視力に差はなし
   5才以上…完全矯正眼鏡装用のコンプライアンス↓
   5才以下…(とくに遠視で)不完全矯正では3D以上の20%が内斜視化

  内斜視(+)遠視(+)→完全矯正
              残余内斜視には手術
  内斜視(−)遠視(+)→度数差は最大50%ただし3D以内
  乱視(+)→完全矯正(乱視軸に注意)

 学童期に始める弱視治療…アドヒアランスを考慮

STEP3
 健眼遮蔽とペナリゼーション
  ・いつ遮蔽を始めるか?
    眼鏡だけの視力改善
     3〜7才で未治療の不同視弱視で60%
      93%で2段階以上の視力改善
      45%で治癒
  ・健眼遮蔽vsアトロピン
    6ヶ月で最終視力は同じになる
  ・毎日遮蔽できない場合は一日おきでも効果はあると期待してよい
    1年後で視力差なし
 弱視・斜視治療の精神的苦痛
  ・遮蔽治療は精神的ストレスになりうる

STEP4
 弱視治療の終わり方
 ・8才以下で治療終了した場合24%で視力低下
  6〜8時間/日の遮蔽の後中止→42%再発
  2時間/日の遮蔽の後中止  →14%再発
 ◎遮蔽を中止する際は漸減していく

  1)眼鏡
  2)アトロピン 毎日
  3)アトロピン 2日/週
  4)中等度弱視 2時間/日 遮蔽
    高度弱視  6時間/日 遮蔽
  5)視力が改善停止し弱視が残ったら、遮蔽時間を増やす
  6)漸減しながら遮蔽中止
  2年以内の再発がほとんど→2年間経過観察

 ・眼鏡だけでも不同視弱視の視力改善あり
 ・遮蔽時間を長くしても視力改善に直結せず
 ・アトロピンによるペナリゼーションでも健眼遮蔽と同じ効果がある

U.間歇性外斜視
自然経過
  斜視角
   10刪ネ上改善 19%
   不変     58%
   悪化     23%
  コントロール(斜位の保持)
   改善 26%
   不変 51%
   悪化 23%(14%が手術)
 間歇性外斜視の評価
  ・斜視角
  ・分類
  ・コントロール(斜位が保たれているか)

 眼位
  ・近見
  ・遠見
  ・9方向…◎まず左右の動きを比べ、次に上下の動きを比べる
  ・戸外を見たときの眼位
    著しく遠いところを見たり、明るい所で片目つむりをしないかを確認する

 分類
  ・基礎型
  ・輻輳不全型
  ・開散過多型
    偽の…高AC/A、Tenocious fusion
    真の…

 手術時期
  年齢:4歳以上
  斜視角:20刪ネ上(戻りの内斜視があるため)
  立体視:悪化したら
  コントロール状態も考慮

 屈折異常
  ・アジア人…外斜視多い
        近視性屈折異常多い
  ・内斜視の90%が20才までに近視化(欧米人)
  ・手術による治療で近視進行に差はなし

  cf:外斜視と屈折異常
      近視の進行と外斜視との関連性は強い
      非優位眼での調節性輻輳の減少→外斜視の進行↑
      
 調節
  優位眼のある間歇性外斜視では両眼視時の調節量が異なる
その他 
 学童期の斜視の問題
  ・外見
  ・視機能

 斜視頻度
  アメリカ
   内斜視60% 外斜視30% 上下斜視7% 調節性内斜視28% 間歇性外斜視14%
  シンガポール(日本と同じアジア)
   外斜視72% 内斜視28% 間歇性外斜視66%(!) 調節性内斜視14%


V.その他
1.学童期以降の眼鏡
 不同視弱視で眼鏡の自己中断
 調節性内斜視で眼鏡の自己中断
 →続発性外斜視への進行
  複視の出現

2.眼鏡処方後のチェックポイント
 処方箋どおりか?
 視力は良いか?
 眼位は良いか?
 レンズ中心間距離は処方どおりか?
 頂点間距離は保たれているか(左右対称か?)

 具体的なポイント 
  レンズの前傾角をチェック
  テンプル・モダンのチェック

  上から見て斜めに装用していないか…大きすぎる

 眼鏡に対する患者さんの不満点
  最多はフレーム強度

3.斜視が再発したら
 完全に診察を中断しないで、6ヶ月ごとに経過観察
 悪化したら、2時間/日の遮蔽から始め1時間/日へ漸減





 
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