ぶどう膜炎の基本戦略
T.ぶどう膜炎の動向
日本の内眼炎(大学病院)
サルコイドーシス 13%
原田病 7%
ベーチェット病 6%
半分位は感染が原因
細菌性、ヘルペス、桐沢型、トキソプラズマ等
同定不能 39%
1.原因疾患順位
相変わらず3大ぶどう膜炎が多い
2.感染症は多様化(潜在性のものはもっと多い)
新規感染:HILV−1等
再興感染:結核、梅毒等
日和見感染:サイトメガロウイルス等
3.やっぱり多い原因不明
役に立つ数字
1)3大ぶどう膜炎が25%
2)感染症が15%(潜在的にはもっと多い)
3)原因不明が40%
ちゃんと検査して分からなかったら、レコードとともに、自信を持って「わからんぶどう膜炎」と診断する
U.ぶどう膜炎:所見の捉え方
診察3つのポイント
1.両眼性か片眼性か?
2.肉芽性か非肉芽性か?
3.炎症の部位とその広がりは?
系統的に診ていくと診断しやすい
ポイント1
炎症がひどい方だけでなく、反対側に(微細でもよい)炎症がないか診る
両眼性
全身病との関連
全身性炎症疾患…両眼同時発症が基本
片眼性
眼感染症…片眼発症が基本
ポイント2
炎症の質を考えながら所見をとる
2大パターン
慢性肉芽腫性炎症
例)霰粒腫…マクロファージ主体
急性肉芽腫性炎症
例)麦粒腫…好中球主体
好中球≒カミカゼ特攻隊(自爆する)
細胞中に多くの炎症起因物質を含む
マクロファージ≒ステルス戦闘機
偵察するけど自爆はしない
非肉芽腫性炎症
好中球主体(病理:細胞の配置は散在性。例)潰瘍性大腸炎に伴うぶどう膜炎)
内因性:ベーチェット病
感染性:黄色ブドウ球菌、腸球菌(毒素を産出)
肉芽腫性炎症
マクロファージ+Tリンパ球主体(病理:細胞は集積。例)サルコイドーシスの雪球状硝子体混濁))
内因性:サルコイドーシス、膠原病
感染性:結核、寄生虫、ウイルス等
ポイント3
炎症の主座とその経時的広がり
広がり
前部、中間部、後部、汎
炎症部位は変化しうる
炎症の進展経過をみる
あるフォーカスから広がる…多くの感染性ぶどう膜炎
例)中間部ぶどう膜炎(眼トキソカラ、結核)
眼全体に同時発症…多くの内因性ぶどう膜炎+急性劇症感染症
V.ぶどう膜炎:検査の考え方
採血セット…スクリーニング用で、これだけで診断に至ることはむしろ稀
基本的考え方
体調チェック、免疫異常スクリーニング、感染症スクリーニング
ポイント1
最高頻度のサルコイドーシスを見逃さない
胸部X線とツベルクリン反応
両側肺門部リンパ節腫脹で結核との鑑別にも重要
ポイント2
ステロイド抵抗性の症例は生検を検討(前房穿刺等)
例)アクネ菌による遅発性眼内炎
ポイント3
診察をこまめにして経過をしっかり診る
ベーチェット病は症状だけで診断
@典型的な眼症状
A再発性口腔内アフタ潰瘍
B皮膚潰瘍
C陰部潰瘍
…経過を診て初めて診断可能
放置しても寛解する時期がある
W.ぶどう膜炎:治療の進歩
治療の主たる目的…過剰な眼局所炎症の抑制
→合併症の予防
不可逆的な機能障害の回避
「対症療法」以上でも以下でもない
引き際(エンドポイント)を明確に!
治療の基本
ストロイドの局所投与
+
散瞳剤による瞳孔管理
全身薬剤投与はあくまで局所投与で治療できない場合
@非ステロイド系消炎剤(NSAIDs)
Aストロイド内服
B免疫抑制剤(シクロスポリン)
Cインフリキシマブ(レミケード)…リウマチに奏功
生物製剤で最初の成功例
ベーチェットで発症頻度抑制
平均1回/月→0.1回/月
8週毎点滴で維持
副作用:感染症
長期成績:3/11例が1年を過ぎると発作再発
効果減弱(二次無効)
@免疫グロブリンクリアランス
Aレミケードに対する抗体出現
今後の問題点
@長期投与が必要(やめられない)
A中止基準が不明確
B非常に高価
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